バーチャル世界における誹謗中傷の撃退!!(4)~「IPアドレス」の利用者の特定

1 本日の広島は雨。

  なんだか最近あまり春らしい天気の日が少ないように思います。

  ぱーっと晴れて欲しいものですが・・・。

  まあ,GWに羽を伸ばせることを楽しみにしながら,今週も頑張りましょう

2 「IPアドレスの利用者を突き止めろ!

 前回は,プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報の開示請求権を使って,掲示板に名誉を棄損するとか,他人のプライバシーを害する書き込みをした加害者が,どの「時間帯」に,どの「IPアドレス」で書き込みをしたのか特定するために執りうる方法をご紹介しました(IT>「バーチャル世界における誹謗中傷の撃退!!(3)~「アクセスログ」の重要性」の項(http://jeans.at.webry.info/201504/article_2.html))。

 実際に,加害者を特定するためには,その「IPアドレス」を利用していたのが誰なのかを特定することが重要になるわけですが,今回は,それを特定するために,どのような方法が執り得るのかをご説明したいと思います。

 前回同様,下の図のように,加害者Aが,契約しているプロバイダBを通じて,インターネットにアクセスし,別のプロバイダであるCの運営する掲示板に,被害者Dの名誉を害するような記事を掲載したというごく単純化した例を挙げて,ご説明しますね。

(図)

  加害者
    A
    ↓ 
   (ISP)   (掲示板)
    B  →    C
            ↓
           被害者
             D

3 「IPアドレスって何?

 さて,通常,皆さんがPCを利用してインターネットを利用する場合,その人が契約しているプロバイダ(ISP)を通じてインターネットの世界に入り,インターネットエクスプローラなどのブラウザを使って,いろいろなサイトの掲示板にアクセスして,それを閲覧したり情報を書きこんだりしているわけです。

 「IPアドレス」というのは,インターネットの利用者が,プロバイダから割り当てられる符号で,通常,「123.456.789.123」のような数字の羅列です。

 同じ「IPアドレス」は世界に1つしかなく,それぞれのプロバイダは,アメリカに本拠地のある民間団体のICCANが,各国の指定管理業者であるレジストリに割り当てた「IPアドレス」のうちから,一定の数の割当てを受けて,それを利用者に提供して料金を徴収するという形で,一般の利用者にインターネットを利用するサービスを提供しています。

 プロバイダの利用者である個人から見れば,インターネットに接続する場合,通常は,そのプロバイダが割当てを受けている「IPアドレス」のうちの1つを,その接続の都度,そのプロバイダから割り当ててもらい,インターネットを利用しているわけです。

 先ほどの図の加害者Aも,Cの運営する掲示板に被害者Dの名誉を棄損する書き込みを行う際には,その接続の際に,プロバイダBからIPアドレスの割り当てを受けて,その書き込みをしているわけです。

 前回,掲示板の管理者Cから,その掲示板に書き込みをした利用記録(アクセスログ)として,「IPアドレス」と「タイムスタンプ」の開示を受けるために執り得る方法をご説明しましたが,その「IPアドレス」というのは,その「タイムスタンプ」に記録された時間帯に,その書き込みをした加害者が契約しているプロバイダから割り当てを受けて,その書き込みをした時間帯に利用していたものになるわけです。


 その「時間帯」に,その「IPアドレス」を割り当てているのはプロバイダですから,書き込みをした加害者を特定するためには,そのプロバイダに,その「時間帯」に,その「IPアドレス」を誰に割り当てていたのかを教えてもらうことができれば,その加害者がAであることが分かるわけです。

 もっとも,実際には,利用している「IPアドレス」を隠すため,Proxyなどが用いられるとか,PC遠隔操作事件で有名となった遠隔操作マルウェアを用いるなどの巧妙な方法が用いられることがあるため,そう簡単に特定できるとは限らないのですが,それぞれの事案に応じ,加害者を特定するために執りうる方法を工夫する努力をしたいものです。

4 どのプロバイダに発信者情報の開示を求めれば良いの?

 さて,前回お話したように,掲示板の管理者Cから,その掲示板に問題の書き込みをした者のアクセスログとして,

------------------------------------------------

   123.456.789.123--[07/Apr/2015:15:31:21 +0900]
   "POST/usgfb.cgi HTTP/1.0"100 234

------------------------------------------------

というような形の記録の開示を受けられたとします。

 前回お話したように,そのうちの「123.456.789.123」というのが「IPアドレス」で,「[07/Apr/2015:15:31:21 +0900]」というのが「タイムスタンプ」なのですが,それでは「123.456.789.123」という「IPアドレス」を割り当てているプロバイダが,どのプロバイダなのかを知るためには,どうすれば良いのでしょうか?

 それが分からなければ,「123.456.789.123」という「IPアドレス」を教えてもらいようがありませんから,これをどのように特定するのが問題になります。

以前にお話ししたように,JP(日本)ドメインの「IPアドレス」は,一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)が管理していますので,その「whois」(https://www.nic.ad.jp/ja/whois/ja-gateway.html)で検索すれば分かるわけです(IT>「バーチャル世界における誹謗中傷の撃退!!(2)~掲示板の運営者の特定」の項(http://jeans.at.webry.info/201504/article_2.html))。

 例えば,この記事を書いている時点で,僕のPCが割り当てを受けているIPアドレスの数字を入力すると,次のように表示され,そのIPアドレスを割り当てているのがNECビッグローブ株式会社であることが分かります。

------------------------------------------------

Network Information: [ネットワーク情報]
a. [IPネットワークアドレス]  **.***.***.***/**
b. [ネットワーク名]    BIGLOBE-11
f. [組織名]         NECビッグローブ株式会社
g. [Organization]      NEC BIGLOBE Ltd.
m. [管理者連絡窓口]    ***********
n. [技術連絡担当者]    ***********
p. [ネームサーバ]     ns32.mesh.ad.jp
p. [ネームサーバ]     ns33.mesh.ad.jp
[割当年月日]        2005/06/02
[返却年月日]       
[最終更新]          2012/11/28 13:32:05(JST)

------------------------------------------------

 このように,その「IPアドレス」を割り当てているプロバイダ,上の図でいえば,プロバイダのBを特定することが出来うるわけです。

5 発信者情報の開示を求める方法

 さて,書き込みをした「IPアドレス」を管理するプロバイダが特定されたら,その書き込みをするために使われた「IPアドレス」を割り当てていたのは,誰なのかということを,どのようにプロバイダBに求めれば良いのでしょうか?

 そこで,登場するのが,前回お話したプロバイダ責任制限法に基づく発信者情報の開示請求です(IT>「バーチャル世界における誹謗中傷の撃退!!(3)~「アクセスログ」の重要性」の項(http://jeans.at.webry.info/201504/article_2.html))。

 この法律により,被害者Dは,Cの運営する掲示板に書き込まれた情報が被害者Dの名誉とかプライバシーなどの権利を侵害するものであることが明らかであれば,その書き込みをした加害者に対する損害賠償請求権を行使するために,その情報の流通に関与したプロバイダであるBに,その書き込みをした「IPアドレス」を利用していた発信者情報の開示を請求することができるわけです。

 ただし,プロバイダからみれば,発信者情報というのは,その利用者の情報ですから,個人情報の保護という観点から,被害者Dが,プロバイダのBに対し,その発信者情報を教えてくださいとお願いしても,通常,Bは,それには容易に応じてくれません。

 そこで,プロバイダのBに対し,その発信者情報の開示を求める訴訟を提起し,その開示を求めていくことになります。

 もっとも,1つのプロバイダの利用者は,膨大な数に上るため,どの「時間帯」に,どの「IPアドレス」を,どの利用者に割り当てていたのかという利用履歴(ログ)も膨大な量に上ります。

 そのため,その保存期間は非常に短く,プロバイダ毎に違うようですが,通常は,2週間ないし3か月程度といわれていますから,その保存期間を経過してしまえば,通常は,加害者Aを特定できないということになり得る可能性は高くなります。

 ですから,保存期間の経過によって,利用履歴(ログ)が消去されるのを防ぐため,発信者情報の開示を求める訴訟の提起に先立ち,仮に発信者情報の保存を求める仮処分申立てを行うのが通例です。

 プロバイダBに対する発信者情報の開示は,掲示板の管理者Cに対する発信者情報の開示を受けた後に行われるため,掲示板の管理者Cに対する発信者情報の開示は,仮にその開示を求める仮処分申立てにより行うことをご説明しましたが(IT>「バーチャル世界における誹謗中傷の撃退!!(3)~「アクセスログ」の重要性」の項(http://jeans.at.webry.info/201504/article_2.html)),それと同じように,プロバイダBに対して,利用履歴(ログ)の保存を仮に命じてもらうわけです。

 その後に,プロバイダBに対してその発信者情報の開示を求める訴訟を提起し,その利用者の氏名・住所の開示を得られれば,その書き込みをした加害者がAであることが分かるということになるので,その加害者Aに対し,違法な書き込みをしたことを理由として損害賠償請求を行うこととなるわけです。

4 まとめ

 兎角,インターネットといえば,難しいものというイメージが付きまとうものですから,そこで,名誉棄損とか,プライバシー侵害となる記事が掲載された場合に,どうしようもないと考えられる方が少なくないようです。

 しかし,それをそのまま放置しておくことは,そのような被害を受けた方に強い精神的苦痛を与え続けるだけでなく,「書いたもの勝ち」という悪しき状態をバーチャル世界に広めることにもなりかねません。

 もちろん,事案によって,様々な隘路があることもあるわけですが,そのような行為には,毅然として対抗することが当然だと思うわけです。

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