成人年齢を巡る議論(3)~残された課題

1 もう3月も終わりですね。

  多くの官公庁,企業では,異動の時期。
  毎年送別会で慌ただしく過ぎていくこの季節ですが,気付けばもうサクラの季節です。

  そして,初戦で惜敗したカープも,週末2連勝!!
  新しい春を清々しい気持ちで過ごしましょう。

  さて,本日の話題です。

2 「成人」って何?

  辞書を引くと,「成人」とは,
   1.心身が発達して一人前になった人。
   2.子供が成長して大人になること。
 などと説明されています。

  要するに,「おとな」であるということが,「成人」という意味なのでしょう。

3 「おとな」と「こども」の差異

  法律は,色々な場面で,色々な理由から,「おとな」と「こども」に差異を設けていますので,ここでは,その代表的なものを見てみましょう。

(1) 選挙権

 国会議員,都道府県知事,市町村長,地方議会議員などの公職者を選ぶ選挙における選挙権は,「こども」には与えられていません

 1人前として,政治に参加しうるのは,「おとな」に限られているわけで,このルールを定める公職選挙法は,20歳未満の者を「こども」としています。

 今般,「成人年齢」を巡る議論で,積み残された課題の1つとして,この選挙権が与えられる年齢を引き下げる法改正が行われようとしていることについては,前々回お話したとおりです(政治>「成人年齢を巡る議論(1)~放火,強盗より選挙犯罪は重大? 」の項(http://jeans.at.webry.info/201502/article_2.html))。

(2) 取引の制限と親権

 「こども」の行う取引は,原則として,親権者の同意を得なければ取消しうるものとされています。

 もちろん,お菓子とか学用品などを買うお小遣いなどのように,その目的を定めて処分することを許した取引などは,「こども」が単独で取引を行うことができます

 しかし,そのような取引でなければ,「こども」の財産は,「おとな」である親権者が管理し,「こども」の代わりに,取引を行うことができることとされています。

 これは,「こども」の財産を守るための仕組みで,このルールを定める民法は,20歳未満の者を「こども」とすると定めています。

(3) お酒とかたばこの摂取の制限

 「お酒とたばこは20歳から」と言われますが,「こども」は,お酒とたばこを摂取してはならないこととされています。

 これは,お酒とたばこが健康に与える影響に鑑み,「こども」を保護するためのルールです。

  このルールに反した場合,「こども」自身が処罰されることはないのですが,「おとな」が,それを知って放置していたら,処罰されることがあり得ます。

 このルールを定める未成年者飲酒禁止法未成年者喫煙禁止法は,20歳未満の者を「こども」とすると定めています。

(4) 保護処分

 「おとな」が,他人のものを盗むとか,他人に暴力をふるうなどという行為に及ぶと,窃盗罪とか,暴行罪などということで,警察のお世話になった後に,地方裁判所又は簡易裁判所に起訴され,刑罰を受けることがあり得ます。

 もちろん,「こども」が,そのような行為に及んだ場合にも,警察のお世話にはなりうるわけですが,地方裁判所又は簡易裁判所に起訴されるということにはなりません。


 「こども」は,家庭裁判所に送致されて,特別重大な事案でなければ,刑罰を科されることはなく,仮に何らかの措置が必要だと考えられた場合でも,保護観察所,児童自立支援施設・児童養護施設,少年院のいずれかに送られ,保護処分という処分を受けることになります。

 保護処分というのは,刑罰とは違い,その「こども」を保護するという理念で設けられている制度で,保護処分は,前科にはなりません。

 「こども」の立ち直りの可能性を期待して,そのような特別な措置が講じられているわけです。

 このルールを定める少年法は,20歳未満の者を「こども」とすると定めています。

4 成人年齢を巡る議論が残した課題

 前回,お話したように,そもそも,今「成人年齢」を巡る議論がされているのは,平成19年5月に,日本国憲法の改正手続に関する法律が誕生した際,その国会審議の過程で,与野党の意見の妥協の産物として,その投票権を与えられる者の範囲を「18歳以上の者」としたためでした(政治>「成人年齢を巡る議論(2)~先送りにされた議論」の項(http://jeans.at.webry.info/201503/article_1.html))。

 制度によって,「おとな」の年齢が区々になるのは,特別な事情がない限り好ましくないので本来なら,その国会審議の段階で,公職選挙法,民法,少年法などの他の関連する法令における成人年齢をどうするのか議論すべきでした

 それらの課題を残したまま,日本国憲法の改正手続に関する法律だけ,「18歳以上の者」に投票権を与えるとしたのは,時期尚早だったと思います。

 「おとな」と「こども」の線引きは,最終的には国民の意識に支えられたものである必要があると思いますから,ある日,突然,「来年から成人式は18歳にしましょう!!」と言われても,違和感のあるひとが多いのではないでしょうか。

 特定秘密保護法の成立の過程もそうでしたが(政治>「特定秘密保護法その1~立法事実は何か?」の項(http://jeans.at.webry.info/201312/article_4.html)),もう少し,多くの国民が問題意識を共有しながら,法律を作るという過程が踏めないのだろうかと思ってしまいます。

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