冷凍食品への農薬混入問題(その2)~企業のコンプライアンスを考える

1 今朝の広島は小雪がちらついていました。

 基本的には寒さに強い体質(体格?)なのですが,さすがに寒~い,そう思いながらの出勤でした。

 大学受験の受験生の皆さんは,そろそろセンター試験の時期です。

 体調を崩さないように最後まで頑張ってください!!

 さて,予想どおり,昨日の掲載は前置きが長いぞというご指摘を受けたので(笑),本日は,早速,本題に入ることとします。

2 企業における不祥事リスク

 引き続き,冷凍食品への農薬混入問題を例として,企業のコンプライアンスを考えてみたいと思います。

 最初の苦情を受けてから自主回収を発表するまで1か月半を要してしまった冷凍食品への農薬混入問題(コンプライアンス>「冷凍食品への農薬混入問題(その1)~企業のコンプライアンスを考える」の項(http://jeans.at.webry.info/201401/article_6.html)参照)。

 食品製造・販売業などの営業者は,その取り扱う食品に健康被害を生ずるものが混入していた場合に,消費者に何ら知らせることなく,そのまま放置した結果,消費者に健康被害などが生じたときは,わざと,又はうっかりして放置していたのであれば,その損害を賠償しなければなりません。

 もちろん損害賠償を問題にするまでもなく,消費者に健康被害などを与えるものであれば,その被害の発生・拡大を防ぐための措置を講ずることを考えなければならないのは当然でしょう。

 仮に,その食品に健康被害を生ずるものが混入していた原因が第三者の行為によるものであって,その営業者は損害賠償の責任は負わないと考えられる場合でも,そのような事態が生じたということ自体で,その営業者の社会的信用は大きく損なわれてしまいますが,その被害の発生・拡大を防ぐための措置を適切に講じなければ,その社会的信用は益々損なわれてしまうこととなりかねません。

 どのように対応するのが,本来あるべき企業の姿なのでしょうか?

 そのために定められた法律を紹介しながら,考えてみたいと思います。

3 取り扱う食品に食品衛生上の被害が生じかねないことが判明した場合における対応

 食品衛生法は,飲食店,食品製造・販売業などの営業者は,その取り扱う食品により食品衛生上の危害が発生しかねない状態が生じないようにするための措置を迅速に講ずるよう努めなければならないものとし,その責務を定めています。

 そして,その責務が果たされるよう,食品衛生法は,営業者が公衆衛生上講じなければならない措置に関する基準を条例で定められるものとし,営業者は,その基準を守らなければならないものとしています。

 その基準として,例えば,広島県は,食品衛生法に基づく営業の基準等に関する条例を定めています。

 この条例は,食品製造・販売業などの営業者が公衆衛生上講じなければならない措置に関する基準として,例えば,次の事項を定めています。

(1) 営業者は,消費者に対し,取り扱う食品の安全性に関する情報の提供に努めること。

(2) その取扱い食品等に起因する食品衛生上の問題が発生した場合に,その食品を迅速・適切に回収できるよう,回収に係る責任体制及び具体的な回収方法等の手順を定めること

(3) 現実に,その取扱い食品等に起因する食品衛生上の問題が発生したため,その食品の自主回収に着手したときには,速やかに広島県知事に報告すること

(4) 自主回収を行う場合には,必要に応じて,消費者への注意喚起等のために,自主回収に関する公表を行うことを考慮しなければならないこと


  これによれば,営業者は,迅速に自主回収を行うための責任体制・手順を,あらかじめ定めておかなければなりませんが,実際に自主回収を行うか否か,それに関する公表をするか否かは,一応はその営業者の判断に委ねられています。

 しかし,実際には,そのまま放置した結果,消費者に健康被害などが生じた場合における損害賠償を回避するためにはもちろん,営業者が自らの社会的責任を果たし,その社会的信用の低下を極力防ぐためにも,あらかじめ,それを迅速に行うための責任体制・手順を定めるだけでなく,実際に,それに従って,迅速に自主回収・公表をしなければなりません

 不祥事が生じた場合には,信頼回復のためには早期対応が何よりも重要です。

 取り扱う食品に健康被害を生じうるものが混入していることが判明した場合に,営業者がそれを公表するのは,広く消費者に問題の発生を知らせるとともに,自主回収を促進するためです。

 その問題の発生の責任が営業者にあるかどうかとは関係がありませんから,それを躊躇してはなりませんし,それを躊躇することによって,その問題を隠蔽しようとしていたのではないかなどという批判を受ける事態を生じさせてはなりません。

4 基準違反に対する制裁

 食品衛生法によれば,食品製造・販売業などの営業者が条例で定める公衆衛生上講じなければならない措置に関する基準に反した場合

(1) 営業許可の取消し,禁止,停止の処分

(2) 厚生労働大臣,内閣総理大臣及び都道府県知事によるその営業者の名称などの公表

が行われうることとされています。

 食品製造・販売業などの営業の施設は都道府県の許可を受けなければ,その営業をしてはならないものですし,営業を行うためには,社会的信用は極めて重要ですから,それらの制裁を受ければ,その営業の継続はできないことになりかねません。

 ですから,その基準に違反するのではないかという疑いを回避するためにも,迅速に自主回収・公表しなければなりません。

5 企業のコンプライアンス

 近年,企業のコンプライアンスという言葉をよく聞きます。

 コンプライアンスとは,法令遵守という意味ですが,最近では,法令遵守はもちろん,その企業の社会的信用を維持し,発展させていくための取組みという意味で用いられています。

 企業の社会的信用を維持し,発展させていくには,

(1) 問題が起きにくい体制の構築に努めること

(2) 実際に問題が起きたときにそれに迅速に対応すること


が極めて重要です。

 報道をみる限りの印象に過ぎませんが,今回の事案で食品に農薬が混入していたのは,第三者の行為によるものという可能性が高そうに思われます。

 アクリフーズが消費者との関係で損害賠償の責任を負うか否かは,今後詳細に状況が解明されるに従い明らかになるものと思いますが,その社会的責任を果たし,社会的信用を回復するためにも,より迅速に自主回収・公表を開始し,消費者被害の拡大を防止する姿勢を示すことができなかったのだろうかと残念に感じますし,決して自分の企業では起きないだろうなどと,人ごとのように考えてはならないと思います。

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